神様が鎮座する兜

花鳥風月
豊かな地球の恵みを敏感に感じ、絶妙な香りの配合を表現してきた先人たちの繊細な感性により培われてきた日本の香文化。それは、自然との共生を大切にし、様々なものを調和させ、新しいものを生み出す日本人の美意識そのもの。そんな日本人の美意識をはぐくむ「日本の美しい自然の移り変わり」を、本コラムでお届けします。

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端午の節句

5月5日は、端午の節句。こどもの日でもありますが、ゴールデンウイークの長期休暇にも重なり、晴れやかな日をお過ごしのことと思います。

ついこの間、「桃の節句」だったと思うと月日の早さに驚くばかりです。

 

そもそも節句とは

以前、「重陽の節句」でも触れましたが、下記そのときの記事から抜粋にてご紹介させていただきます。

 


そもそも、節句とは季節の折目節目、つまり“季節の変わり目”のことを意味しており、古代中国(唐時代)の暦法で定めれた季節の節目でした。

古代中国では陰陽説が尊ばれており、陽(奇数)が重なると陰になるとして、暦の中で奇数の月と日が重なる日をとりだし、陰を避けるため季節の旬の植物から生命力をもらい邪気を祓っていたといわれています。 この中国の暦の影響をうけて、古代の日本の朝廷も年中行事として定め、その風習が日本の農耕を行う人々にまで伝わり、人日(1月1日)、上巳(3月3日)、端午(5月5日)、七夕(7月7日)、重陽(9月9日)が五節句と定められ、宮中で邪気を祓う宴会が催されるようになったそうです。

邪気を祓い、新節を清い体で

いずれにせよ、前述したとおり節句は季節の変わり目であることにほかならず、体調をくずしやすい時でもあります。 現代は医薬が充実していますが、未発達であった古代の時代で考えれば、邪気を防ぎ健康を保って季節の変わり目を乗り切るということは切実な願いであったと思います。 そこで、季節の旬の植物から生命力をもらい邪気を祓うことが行事化され、前節までに身につけた穢れを祓い、新節を清い体で乗り越えようと考えられたのがことのはじまりです。


 

 

強い香気で厄払い

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邪気を避け魔物を祓う薬草とされていた「菖蒲」。強い香気で厄を祓う菖蒲やよもぎを軒(のき)につるし、また菖蒲湯に入ることで無病息災を願いました。

また、田植えの時期でもある五月は、田の神を迎えて豊穣を祈るために、早乙女が巫女となり、菖蒲を葺いた小屋で禊を行ったとも伝えられています。
私は、母が小さい頃より毎年5月5日は「菖蒲湯だからゆっくり温まりなさい」と言われはいっていましたが、大人になってこういう意味合いが込められていると思うと、またそこに親の子供への健やかに育ってほしいという願いも込められていたんだと思うとうれしくなります。

 

武士を尊ぶ、「尚武」の日へ

 

菖蒲で清め祓うという風習から、時代がだんだんと武家社会変遷するにつれて、「菖蒲」と「尚武」をかけた尚武(武士を尊ぶ)の節句へと移っていき、いま私たちの暮らしにもつうじている、男の子の誕生と成長を祝う日へとなっていきました。

 

15年ぶりに日の目を見る、そして祖父母と両親の思い

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この兜の飾りは、裏参道ガーデン店内4月後半から5月5日まで飾っていたものです。実は、この兜は30年前に購入したものです。15年ぶりぐらいに久々に箱からだしたのですが、風化せずそのままきれいに保存されていました。

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兜の正面には、立身出世できるようにという願いをこめられ立派な「龍」がついており、兜をかぶり「雄々しい子供に育つ」ようにと願う親心を感じます。

 

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また、龍の下の額の上にあたる部分には、満開に花ひらく「梅」の花が。
Juttoku.の印香にも「梅」を象ったものがありますが、「梅」は初春に他の花より先駆けて香りの良い清らかな花を咲かせることから「希望」の象徴とされています。また、冬の風雪に耐えて花開く梅の姿から「大願成就」の象徴ともされています。まさに、これも男の子の成長へと願う心と合い増す飾りに感じます。

 

威風堂々たる凛々しさ

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時代も遡ると、戦国時代などの戦の時代はこのような兜を頭にかぶり、そして重い鎧を着て戦場で戦いをしていた時代が、この日本の中で行われていたと思うと不思議な感じです。

兜もなかなかきちんと見ることができなかったので、いろいろとゆっくり見てみると一つ一つに先人たちの心・精神を感じます。

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いろいろな角度から見える兜の姿は、遠くから見える姿と近くよって見える姿とはまた威風堂々とする姿が違う印象にみえます。

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そして、背面からの姿もとても強さを感じつつ凛々しさをも感じます。ふと、頭部に目をむけると、大きな穴があいていました。

通気性を考慮して穴があけられているのかなと思ったのですが、調べてみると、この穴は「天から神様が降りてきてくれる場所」とされているそうです。

 

神様が鎮座する

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この上部の部分は、「八幡座」と呼ぶそうです。この穴の部分に、天から神様がここに降りてきて、この兜をかぶった人を護ってくれるとして穴を開けていると言われている事から、そのように呼ぶとされており、兜の上は、神様が鎮座する場所としてとても神聖視されていたそうです。

天から神様が降りてきてくれる場所」である八幡座の穴から神様が入り込み、自分自身を護ってくれると考えていた。

無論、八幡座には頭を蒸れないようにする役目も持っているとされていたそうですが、今の時代で(たとえば・・・)兜と同じような役割のものを作れと言われたとき、ハイテク技術を盛り込んだり、いかに頭部を守るかという部分にばかりフォーカスされてしまい、「神様が守ってくれる」というような精神というのはおそらく毛頭にもないことでしょう。

 

兜を作った人が自然と感じえた世界観であり、精神なのでしょうか。平和で衣食住に困らない今の時代でなく、明日は我が身とまではいかぬとも不安定な時代だった戦の時代のなかで、考えられた古の人々の精神にただただ頭が下がるおもいです。

 

 

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端午の節句の話から、兜の「八幡座」の話まで多岐にわたってしまいましたたが・・・、季節の切り替わりでもあるので今宵は菖蒲湯にでもつかりながら香りで穢れをはらい、体も温め、そして、古くから伝わる日本の風習に心を寄せながら過ごすひと時もお楽しみください。

兜のお飾りは、Juttoku.店舗の裏参道ガーデン店にて本日5月5日まで飾っております。ぜひお立ち寄りのうえ、皆さまも「八幡座」の部分を覗かれてみてはいかがでしょうか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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