師走の満月の夜に~稽古照今~

花鳥風月~美しい自然の移り変わり~
豊かな地球の恵みを敏感に感じ、絶妙な香りの配合を表現してきた先人たちの繊細な感性により培われてきた日本の香文化。それは、自然との共生を大切にし、様々なものを調和させ、新しいものを生み出す日本人の美意識そのもの。そんな日本人の美意識をはぐくむ「日本の美しい自然の移り変わり」を、本コラムでお届けします。

師走の満月の夜に

冬至も過ぎ、いよいよ慌ただしくなってまいりました。
2018年も残りわずか。そして、今宵は師走の満月ということで2018年最後の満月の夜になります。

 

 

「古事記」から学ぶ

 

 

稽古照今

(けいこしょうこん)

 

 

古事記の序盤に記載されているともいわれ、四字熟語にもなっているこの言葉。意味としては、「いにしえを省みて、今に照らす」。

 

 

調べていて面白いことに、“稽古”の文字の「」という「神を迎えて神意を量はかる」の意味があるとのこと。なので、稽古というのは「古いにしえに稽かんがう」で、元来は「昔のことを考え調べる」という意味らしいです。

 

話は少しそれますが、個人的に香道のお稽古に幾何の年数従事しており、海外の友人たちに「お稽古」というのを英語で説明するときに自分の中で何か腑に落ちないときがあります。習っているのだから「lesson」と同じではないかといわれますが、“稽古”となると何かそこには違うニュアンスが含まれていると漠然とずっと感じているものがありました。それは、師匠に弟子入りしているからなのか、それとも、“道”がつくように精神道がそこにはあるからなのか、レッスンを受けるという言葉がどうしても薄く感じ釈然としなかったのが、ようやくこの語意を知りすっきりしました。

 

 

古いにしえに稽かんがう

日本の香道というのも室町時代には焚き方に法式を定められ香道の成立がなされ、江戸時代中期には家元制度も確立し、現代の今日にまで至ります。そのため、お稽古のなかにおいて、それこそ江戸の時代以前にも通ずるものが今こうして自分が学べ、そして、息づいているところに感嘆することが多々あります。それこそが、まさに、先人たちからの教え、そして、いにしえの事柄に照らしわせながら、物の道理を学んでいく、というのがあるからなのだなとわかり感慨深くなりました。

 

 

「今」を過ぎれば、もうそれも「過去」

さて、話はやや道にそれてしまいましたが、「稽古照今」について。“いにしえを省みて、今に照らす”という意味ですが、“いにしえ”というのは何も古い昔、歴史を辿ることだけではないのかなと思います。

今というこの瞬間を過ぎれば、時間は遡れずその時はすでに過去になります。

 

つまり、私たちのこの人生、そして、今日、昨日、この1年・・・も同じことなのではないでしょうか。

 

 

一年を振り返り、今に照らす

今宵は満月。

静寂な夜に、香を焚きながら一人静かにこの一年のことを省みてはいかがでしょうか。

 

過ぎ去るとあっという間と思いますが、すべてが良いことばかりではなく、悪いこともあったりと喜怒哀楽に満ちたものであると思いますがそれもまた人生。自分がたどってきたその軌跡から、また次の芽が生えていくのだと思います。

香を焚いているその時だけは、日ごろの慌ただしさから解放され、気持ちがほっと和みます。そんな中で、この一年を省みて、今に、そして、きたる新しい年へ思いをはせてみてはいかがでしょうか。

来年は新しい元号も始まる年ですが、皆さまにとってもまた素晴らしき良き時が刻まれていく年になりますように、心より祈念するとともに、Juttoku.の香も皆さまの心の灯にともしつづけられるように、私どもも“稽古照今”していきます。

 

すてきな満月の夜をお過ごしください。

 

 

 

 

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