心を鎮める ~弥生の満月の夜に~

花鳥風月~美しい自然の移り変わり~
豊かな地球の恵みを敏感に感じ、絶妙な香りの配合を表現してきた先人たちの繊細な感性により培われてきた日本の香文化。それは、自然との共生を大切にし、様々なものを調和させ、新しいものを生み出す日本人の美意識そのもの。そんな日本人の美意識をはぐくむ「日本の美しい自然の移り変わり」を、本コラムでお届けします。

三月の長雨

庭羊歯の春黄ばむ葉にしづかなる雨ぞ久しき明るき空より

これは、歌人である小暮政次氏の歌です。羊歯(しだ)は春先に旺盛な新芽をだし、葉の色が黄色く変えている、そのうえには静かな春雨が降り続ける。空を見上げると、重くどことなく暗く感じる低い冬の空ではなく、春らしい明るい空を、そんな春が深まってゆく穏やかな情感が伝わります。

日本は三月にも長雨があって菜種梅雨とも呼ばれるように、今日の雨もまた細かい霧のような雨です。

 

あいにくの雨模様

さて、先日も職人の工房の元へ淡路島へ行ってきました。山と海に囲まれた場所ですので、晴々とした天気をどうしても期待してしまいますが、今回はあいにくの雨模様。

この雨もこれから芽を大きくひらいてく木々にとっては恵みの雨であるので、忌み嫌うのは愚にもつかないのですが、どうも昨今の新型コロナウィルス騒ぎで先が見えない不安に苛まれやすい時期なので、天気だけでも心に明るい陽射しを差し込ませたくなります。

 

伊弉諾神宮へ

淡路島に着き職人の工房の元へ行く前に12年前からいつも伊弉諾神宮にお詣りに来ます。

 

Juttoku.にとってはここが始まりの場所。12年前にここで一心に祈りを捧げてから今があります。ここに来ると原点に立ち返らせてくれる、大切な場所の一つです。

 

境内の中にあるこの大きな楠木は心の拠り所のひとつ。雨にうたれながらも木の下から空を見上げていると、葉に落ちる雫の輝きや雨雲の流れに美しさを感じたり。

『あ、そうか。結局は心の持ちよう、とらえ方で変わるのか』と。

 

さっきまでどことなく憂うように感じてしまうこの雨も、ゆくゆくは春の新緑を彩る芽の栄養源で貴重な雨。そして、心なしか、この雨音が心地よく聞こえる。 コロナの影響で在宅勤務であったりいつもとは違う行動を強いられてしまえども、むしろ今までとは違う時間の過ごし方ができる大きなチャンスでもあったり。

どこに心の視点をおくかで、とらえる世界も変わってくるようにも感じます。

 

 

自分をみつめる時間

心の在り方で見える景色も変わるということは、心との向き合い方が問われてきます。

 

自らを悪をなさば自らが汚れ、自ら悪をなさずば自らが浄し。 浄きも浄からざるも、各自のことなり。他者によりて浄むることをえず(『法華経』一六五 )

これは『法華経』からの抜粋になりますが、本来の思いや願いとは裏腹にかけ離れた自分を諭し戒められているようにも。

一日のうちに少しでも自分をみつめる時間をもち、心を鎮めて体を柔らかに呼吸を整える。そうすると、心の散乱も静まり、高ぶることも沈むこともなく、ありのままに生きる心が養ってきます。

これぞまさにJuttoku.が香をつうじて届けたい功徳のひとつです。

戦国時代の武将たちも戦の前に香を聞き、心を整えていた。これもまた、香りの効能というのを知っていただけでなく、いかに荒れ狂う心を落ち着かせるかというのが大切なのかを知っていたからでしょう。

 

心が真っすぐ立つ

Juttoku.の香が天然由来の原料のみで丁寧に作っているのも、妙香を深く吸っていただきたいがごとく、ゆっくり呼吸をしてほしいからであります。

そして、真っすぐに伸び立つお香も、心が真っすぐ立つようにという思いが職人の作業のひとつひとつにも込められています。

弥生の満月の今宵は、香を焚き、ただただ無心に深い呼吸をしてみてください。きっと香煙とともに、心の中に溜まった様々な感情も吐き出て、明日の朝には明るく暖かく安らぎにみちた世界がひろがっているでしょう。

すてきな満月の夜をお楽しみください*

 

 

 

 

(2020年3月10日満月の夜に配信した月便りの内容を一部変更して転載)

 

 


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