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先日の落語の話の続きです。
コウバン
先日の独演会の会場の中でのことでした。開演する前にに聞こえた会話のなかで、「三遊亭のコウバンは、今は~」と。後半は聞こえなくなってしまったのですが、ふとこの言葉が耳に残り気になりました。
『コウバン・・・・?! 交番?降板?どういう意味だろう・・』
気になったので、休憩時間中に知人の同じく鳳楽師匠の長年のファンの方に伺ったところ、教えてくれました。
「コウバンは、噺家(芸人)の序列のことだよ!」
聞くところ、漢字は「香盤」と書くそうです。これを聞いた私は、まるでこれはお香と同じではないかととてもびっくりしました。
落語の世界で意味する『香盤』とは
あらためて、上述のとおり落語の世界では噺家の序列のことを『香盤(こうばん)』と呼ぶそうです。落語協会内部でつくられているそうで、この序列による上下関係により、坐る位置や寄席の割りなどを決めるそうです。
例えば、この序列。まずは、師匠のもとに入門して見習いのタマゴである「前座見習い」、そして「前座」、「二ツ目」、そして約10年ほど二ツ目を努めるとようやく「真打ち」につけるそうです。ただし、「真打ち」になったから安泰ではなく、一生修行して磨きをあげていくのが真の落語家であるという言葉が印象的でした。
私が会場で聞いたあの会話は、この香盤を意味しており、おそらく今日の独演会では誰が前座で、二ツ目なのかを話していたのかもしれませんね。
※(余談ではありますが)後で調べて知ったのですが、江戸落語ではこの香盤が公になっているのですが、上方落語では香盤は存在するそうですがそれが公にはしていないそうです。公開してしまうと、ペナルティとしてその落語家の香盤を下げてしまうとか。理由が気になります。
そもそも「香盤」とは
さて、この「香盤」。落語会で意味する“コウバン”の漢字を聞いて驚きましたが、字のごとく、「香」の「盤」。 香道に使われる香盤とまるで同じなのです。
香道では、一片の小さく刻んだ香木を炭を中にいけこんだ灰のうえに、銀葉(ぎんよう)というガラスみたいな薄い透明の板にのせて香りを聞きます。 お作法として、香を焚く前にこの銀葉を乗せたり、焚き終わった香を銀葉ごと置いておくために使われるのがこの香盤になります。
この香道で使う香盤と、落語界で意味る香盤がどのようなつながりがあるのか・・・。
歌舞伎界で意味する「香盤」
調べてみると、落語会だけでなく歌舞伎界でも「香盤」があるそうで、実際は「香盤表」という言葉で使われているそうです。 意味は二つあり、一つは製作スタッフの方たちが配役を書き込んで使う「一覧表」、もう一つは「客席の座席表」を意味するそうです。
“縦横の線で作った升目の右端に演目・場面、下に一座の俳優名が並んでいます。俳優が出演する演目には、升目に役名を書き入れ、各演目のどの役に誰が出ているか一目でわかります。”
(引用元:歌舞伎公式サイト
http://www.kabuki-ito.jp/kabuki_column/todaysword/post_172.html)
私はこの香盤表の実物をみたことがないので推測でしかないのですが、この配役の一覧表が碁盤の目のようにしきられており、それと同じように香道でつかう香盤も升目のように縦横で配列されている盤なので・・・・それに似ているというところから香盤という言葉を選んだのでか。
歌舞伎界、落語界、香道で多岐に使われる「香盤」という言葉
もはやここまでくると・・・・すべて憶測でしかないのですが、落語界で意味する香盤ももとは相撲の番付のように横綱を筆頭に、関取などが書かれているように、碁盤の目のような整列された表に「真打ち」「二ツ目」「前座」と書かれていたのかもしれません。
「香盤」という言葉一つで、業界を越えて多岐にわたりそれぞれの意味で使われているのにあらためて驚きを感じているのと同時に、日本の代表する芸能・芸道文化が言葉で横につながっているところになにか歓びも感じます。
知れば知るほど奥が深く楽しい世界。落語はまだまだ足を踏み入れたばかりではありますが、香道にしろ、歌舞伎にしろ、落語にしろ・・・・長い歴史をもちもはや日本の文化の一つでもある世界を気軽に楽しめるこの地にいれることに感謝です。
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