花鳥風月~美しい自然の移り変わり~ 豊かな地球の恵みを敏感に感じ、絶妙な香りの配合を表現してきた先人たちの繊細な感性により培われてきた日本の香文化。それは、自然との共生を大切にし、様々なものを調和させ、新しいものを生み出す日本人の美意識そのもの。そんな日本人の美意識をはぐくむ「日本の美しい自然の移り変わり」を、本コラムでお届けします。
秋の気配
朝夕日毎に涼しくなってきました。
盛夏の頃よりもだいぶ日暮れが早く感じたり、また、仕事からの帰り道には、懐かしい虫の声が鳴きはじめ・・・・蒸し暑さからようやく解放された安らぎを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さえざえとした夜空に月も星もくっきり輝き、秋の虫の音やそよ風から秋の気配がすぐそばに感じられます。
中秋の名月
秋澄む夜空にくっきり浮かぶ秋の月、特に旧暦の葉月15日夜の満月を「中秋の名月」「名月」「十五夜」と呼ばれており、一年の中でもっとも美しいといわれております。
今宵は、そんな「中秋の名月」の日。
秋澄んだ夜空にはえるお月様を愛でるときですが、このならわしは、唐の時代に中国から伝わってきた月見の祭事と、古来日本にあった月を祀る慣習が合わさったものです。
古代には欠けのない満月を豊穣の象徴とみなしていたともいわれており、秋の実りに祈りを捧げる行事でもあり、平安時代には貴族たちが舟遊びをして水面に映る月を眺めたり、杯に月を映したりして楽しんでいたそうです。
豊穣の月への捧げもの
この季節は、多くの作物が実る豊穣の時であり、「時満ちて実を結ぶ頃」と満月の「月が満ちる」ということも重なり、月に感謝する特別な日です。
お月様にはこの時期が旬の野菜や果物、また里芋などのほかに、満月を表す団子を三方に奉書紙を敷いたうえに並べてお供えします。その隣には、豊穣をもたらす月の神様の依代と考えられてるススキの穂もしつらえます。
これらお供え物はお月様に捧げるとの意をこめて、月の出る方角へ正面をむけてお供えします。月から見て左が上座にあたるため、左に里芋などの秋の収穫(自然界の盛り物)を、人工のお団子は下座である右側にしつらえます。
ススキの穂は稲穂に見立てたもので、その秋の豊作の祈り、田の実りへの感謝を捧げます。また、葛などの蔓のある植物を飾ると、月の神様に通じるという意味合いもあるのとか。
自然界へ「感謝」
ここ東京は、生憎曇り空なので、きれいに月を眺めることができるか・・・気がかりではありますが、こうして「お月見」の習わし・理由を知ると、今夜は特別な夜な気がします。
現代の日本の暮らしでは、昔の方に比べては格別にあたかも簡単に野菜など食べ物を手にすることができますが、その背景には様々な働きをしてくださる農家の方、運搬してくれる方、そして、流通して販売してくださる方など多くの方々のおかげであります。
また、同時に、これら作物が美味しく実るには、太陽や雨などの天候、自然の働きがあってこそ。
今宵はぜひ香を焚き清らかな空間の中で、月見をしながら、自然や目に見えないけれどもこうして支え合っている社会への感謝の気持ち、そして・・・祈りを捧げてみてはいかがでしょうか。
すてきな月夜をお楽しみください。
お知らせ
Juttoku.の「印香 満月」は、現在下記のイベント内にてお取り扱いいただいております。
◆ 銀座三越 7階 ジャパンエディション内
◆ 日本橋三越 本館 5階 ギャラリー ライフ マイニングスペース内 「月のワルツ展」
もしよろしければ、ぜひお立ち寄りください。