”竹笑う” ~皐月の満月の夜に~

花鳥風月~美しい自然の移り変わり~
豊かな地球の恵みを敏感に感じ、絶妙な香りの配合を表現してきた先人たちの繊細な感性により培われてきた日本の香文化。それは、自然との共生を大切にし、様々なものを調和させ、新しいものを生み出す日本人の美意識そのもの。そんな日本人の美意識をはぐくむ「日本の美しい自然の移り変わり」を、本コラムでお届けします。

薫風さわやかな季節を迎えました。二十四節気では「立夏が過ぎ、新緑が日にあざやかに映ります。

 

涼風を運ぶ竹

風薫る皐月ともいわれますが、この季節になると木々を揺らす風が心地よく吹き抜けていきます。里山にはいると様々な木々が群生し、風が吹き抜けるときに聞こえる木の葉のさえずりは実に様々です。とりわけ、清々しく感じるのは群生している竹の葉から聞こえる音。

竹やぶのなかで風が吹き抜けると、竹の葉が一枚一枚”さらさら”と清々しく鳴っているようで、なんとも心地よく涼風を運んでくれているようにも感じます。

 

力強さ

こうして風にゆられている竹を眺めていると、どの方向からの風が吹いてきてもしなかやにその身を揺らしています。まるで吹き込んでくる風にあらがうことなく、しなやかに揺ら姿に心惹かれます。

 

八風吹けども動じず  (禅語より)

 

八風(人の心を乱す八つの逆風:利・衰・毀・褒・称・譏・苦・楽)が吹き寄せても動じない、という教えのある言葉。 竹をみていると強風がたとえ吹きようとも、しなやかに揺れ、決してなぎ倒れるわけではないのでその力強さがこの言葉に映し出されているようにも感じます。

しかし、一方でこのしなやかさには違う教えもあるようにも。

 

しなやかに

竹笑う」

大風が吹くときの竹の葉の様子のことを言いますが、身を投げ出して自分を必死に守ろうと逆らい抵抗することなく、どんな風がきても平然と無事でいる、それが笑っているようにもみえることから「竹笑う」といわれます。

私たちはついつい『こうしていく!』『こう進むんだ!』と物事を思うままにコントロールしようとしてしまい、すべてが風の風しか吹いてこないと思い込み、それが世の常であるかのように思いがちです。

しかし、こうして竹の揺らぎをみていると、風はいつも四方八方ら吹いてきています。私たちにとっていつも順風の風が吹いていると思っていても、逆風もあるし、雨風、追い風、、そして、そよ風もあれば、時には強風も。何も困らせようと思って吹いているわけでもなく、こうして風は常に変化するもの。

 

 

だから、どんなところからもいろんな風は吹くものだと理解しているだけでも「竹笑う」かのように、しなかやかに生きていけるのかもしれません。

 

皐月の満月の夜

今宵は、皐月の満月の静かな夜。Juttoku.の香を焚きながら、心の中に風をいれこむかのように無心に深い呼をしてみてください。 きっと香煙がゆるやかにくゆらいでいくように、心も体もだんだんと力が抜けてきて、柔軟でしなやかな心に変化していくのを感じていきます。

こうも便利な時代を生き抜いている現代社会において、『すべてを思いのままに操れる』『こうでなければいけない』とすべては順風の風しか吹かないと思い込み生きていってしまっていますが、突風であろうと逆風であろうと「竹笑う」かのようにどんな風が吹いてこようとも常に柔軟に対応していくのが、自然とともに同じ地球上に住んでるものとして思い起こさなければいけないことなのかもしれませんね。

 

 

どんな風が吹き抜けても竹のようにしなやかに生き、そしてまた強く新しい芽をだしていける実りある未来になりますように*すてきな満月の夜をお楽しみください*

 

 

追伸

自粛が続いている中ではありますが、今回お届けした『竹』は自宅の裏にある里山にて、朝の散歩の中で撮影してきたものです。Juttoku.店内でも竹が自生しているよのを意図してレイアウトしていますが、神聖視されつつも、その姿から勇気をもらえる竹が好きが高じたものでもあります。

「竹のしなやかさ」はいつも生きる教えをもらいますが、一方で、竹のにも勇気と希望を感じています。それは、空に向かってまっすぐ成長していくが、時にはぶれたり折れそうになったりして、まっすぐ成長できないこともあるけれども、それが結果的に節になるように、支えとなる強い経験が力となり、その節がたとえ強い風が吹き込んでも折れずに守ってくれ、そして、また真っすぐに上へと伸びていける。

全世界中で騒ぎになっているコロナ騒ぎが、順風と感じる人も、突風で逆風と感じる人もそれぞれであると思いますが、今経験していることは多かれ少なかれ、私たちにとっての大きな「節」になっていることは間違いないと思います。これを乗り越えた先はまた上へ上へと伸びていけるのを楽しみに、今は『今』を楽しみながら生きていくことが何よりも一番なのではないかなと思います。

 

 

 

(2020年5月7日満月の夜に配信した月便りの内容を一部変更して転載しています)

 

 


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