一切成就の祓い~水無月の満月の夜に~

花鳥風月~美しい自然の移り変わり~
豊かな地球の恵みを敏感に感じ、絶妙な香りの配合を表現してきた先人たちの繊細な感性により培われてきた日本の香文化。それは、自然との共生を大切にし、様々なものを調和させ、新しいものを生み出す日本人の美意識そのもの。そんな日本人の美意識をはぐくむ「日本の美しい自然の移り変わり」を、本コラムでお届けします。

 

梅雨入りし湿った空気がときに煩わしさを感じるときもありますが、大地に目をやると、草花にとっては恵みの雨。

 

雨の合間に里山へと足を運ぶと、あれよとあれよの合間に竹が伸びきっている姿をみて、竹の生命力の力強さと、そして、その清々しい竹の葉の音に、梅雨のジメジメのなか束の間の清涼感を味わえます。

 

また、満開に花開く紫陽花が、道端からも涼を愛でることができありがたいです。

 

花がさまざまな色になることから、「八仙花」や「七変化」とも呼ばれるそうですが、「紫陽花」という漢字があてられるようになったのは平安時代からだそう。

 

あじさいの花

まるくまるく
形のよいものに
なろうとする
やさしい心の
あじさいの花

きのうよりも
きょうと
あたらしい色になろうとする
雨の日の
あじさいの花

(坂村真民 詩集「念ずれば花ひらく」より)

 

心を丸く、そして、昨日よりも今日・・、紫陽花がそう諭してくれているかのように感じた瞬間でした。

 

久々にこの詩集を読み返したいと思い数年ぶりに開いてみると、その時にはあまり関心をはらうことができなかったのも、多少なりとも年の項がはたらいたのか、また感じ見えるものが違いどこか感慨深く感じました。

 

今を生きる

咲くも無心
散るも無心
花は嘆かず
今を生きる

(坂村真民 詩集「念ずれば花ひらく」より)

 

一字一輪

字は一字でいい
一字にこもる
力を知れ
花は一輪でいい
一輪にこもる
命を知れ
(坂村真民 詩集「念ずれば花ひらく」より)

 

ひるは
ひかりのなかを
よるは
やみのなかを
ながれてゆく川
だから川は
美しいのだ
なぜなら
この二面の世界に
執せず
着せず
サラサラと
海に向かって
ながれてゆくからだ
(坂村真民 詩集「念ずれば花ひらく」より)

 

いかがでしょうか。
数多ある作品の一部を勝手ながら抜粋しご紹介させていただきましたが、どの作品も自然の姿を映し出され心に響きわたります。

特に最後の「川」においては、“サラサラと海に向かって流れてゆくからだ”というところに情景を思い浮かべていると、そこはかとなく心が軽くなります。

さて、今宵は水無月の満月の夜。
香を焚きながら、心のなかを祓い清めてみてはいかがでしょうか。

特段、何かに対して怒りや恨みをもっているというのはなくとも、心の中に知らぬ間に負の感情がまるで心のゴミのようになり、滞っているのかもしれません。ちょうど“夏越の祓”の時期にも重なり、コロナに翻弄されやり場のない苦しみや心の疲れを洗い流すよいときなのかもしれません。

 

極めて汚濁(きたな)きことも
滞り(たまり)なければ、穢濁(きたな)きはあらじ
内外(うちと)の玉垣(たまがき)
清(きよ)し
浄(きよ)しと白(もう)す

【祓詞:一切成就の祓い】

 

これは、人や世のなかの罪・穢れ・災いを祓い、一切のことが成就するという祓詞。香を焚きながら、この祓詞を唱えるのもいいですし、ふとして思い立ったときに唱えられるのもよいのではないでしょうか。

 

心の中も祓い清められ、残る2021年後半も、平らかに安らかなときをお過ごしになられますよう心からご祈念申し上げます。
すてきな水無月の満月の夜をお楽しみください*

 

(2021年6月満月の夜に配信した月便りの内容を一部変更して転載しています)

 


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