祈りのひとときを共に
コロナ禍で開催が見送りになっておりましたが、感染防止対策を徹底したうえで第一回目の【香仏づくり】を両日とも無事に開催することができました。ご参加いただきました皆々様におかれまして、この場をお借りしてあらためて御礼申し上げます。ありがとうございました*
香仏とは
ありがたいご縁をいただき、彫刻師であり仏師であられる林雄一さんとの最初の出逢いのなかで自然とうまれたこの企画。
“祈り”と”香”をより身近に、そして日常の暮らしのなかでお楽しみいただきたいという思いから、この体験会がうまれました。
心のしじまなるままに
香仏づくり。まずは、四角柱の木曾ひのきをノミと彫刻刀、のこぎりを駆使して彫っていきます。これは、円空さん自身もナダで一刀彫で簡素に彫り上げる円空仏の象徴でもあります。(しかし、簡素とはいえども、そこには深い意味があります。)
樹齢200年ほどの木曽檜の良い芯材の部分を選んでいただき、この四角柱の木曽檜から造仏していきます。ドキドキ、ワクワクです。
ご指導いただく林先生は、一つ一つ丁寧に教えていただけます。なので、安心して皆さん黙々と造仏にとりくめます。
店内は水の音とBGMの虫の音、そして木を削る、彫る音。何にも邪魔されない心静まる空間が、造仏していく過程からすでに祈りにつうじているように感じます。
造仏していく過程はここではあまり深くご案内できない、というよりも実際に体験する過程に醍醐味があると思っておりますが、一部をご紹介。 まずは四角柱の檜に筋入れをしていきます。
その後は、線をひいたところにノミをいれていきます。初めてノミを触る方も多く一瞬大丈夫かなと不安を覚えますが、一瞬でそれも消え去り、気づけば一心にノミを小槌でたたいています。
円空仏の魅力はお寺などで拝見する豪華絢爛なお姿の仏様に比べると簡素な印象が強いですが、
「シンプルこそ究極の美」とも感じるほど、そこには本当に細かいところに息がかかっているというのが体感できます。
気になる点などがあれば、それを声にださずともすぐにその気配を感じるかのようにすぐにフォローしてくださるので、造仏を進めていく過程で心の迷いなどは何も生まれず、彫刻刀で木を削っていくように、心も研ぎ澄まされていく不思議な感覚になります。
約3時間という一瞬、長丁場にも思えますが、しじまなひと時は終わるとあっという間です。まるでそこには円空さん、そして仏様も遠くから見守ってくれているのかなと感じてしまう心の安らぎの賜物です。
思い思いの祈りを香とともに
造仏が完成したら、お姿の背面に思い思いの祈りを書き入れていきます。
仏教では極楽浄土は良い香りを香るだけで生きていくことができる世界といわれ、かぐわしい香りに包まれた世界。
その世界に彫り上げたご自身の観音様にも身を置いていただけるように、彫り上げた「観音様」に一心に祈りを捧げていくように、香りで彩りを添えていきます 。
そして、思い思いのそれぞれの観音様、ならぬ【香仏】が無事に完成となります。
円空さんの想いに通ずる
出来上がった円空仏の観音様は面白いほどにみんなそれぞれ一体一体から個性を感じるほど、表情豊かなお姿です。
それは、円空さんの想い、実在の円空仏を体現しているかのようにも感じます。
そもそも“円空さん”とどこか親しみをもって呼称してしまいますが、江戸時代初期に日本各地を遊行しながら円空仏を彫り続けた修験僧であり仏師、歌人です。美濃国(現在の岐阜県)を拠点としながらも修行を重るため全国を行脚。
各地の人々との交流を深めるなかで、その土地ごとの人々の悩み苦しみに耳を傾け、悩み苦しむ人には菩薩像を、病に苦しむ人には薬師像を、災害に苦しむ人には不動明王像を、干ばつに苦しむ人には竜王像を、限りある命を救うために阿弥陀像などを刻み歩いたとのこと。
日本各地を行脚するなかで生涯造仏したその数はなんと【12万体】とも言われています。そして、全てのお顔が違うというので同じものは一つになく。
(※約64歳の生涯と考えたとしても、単純計算で一年で彫ったのは約1800体。それを一日で割り、24時間のなかで置きかえると・・・ほとんどずっと彫っているといっても過言ではないほど。毎日のようにずっと彫っている林先生でさえ、これはなかなかできないと仰っています。)
Juttoku.もご縁を深くいただいている奈良県天川村にも円空仏があり、以前に村の人が連れていってくれたのを覚えています。(天川村栃尾観音堂/参考URL:http://shigeru.kommy.com/enkuu15.htm)
こうして林先生のお話をつうじて円空さんのことを知ると・・・・車や電車などの移動手段が何もなかった当時、あんな山間部にまで足を運び、そして村の方々のために造仏をしていたと考えると、円空さんへの崇敬の思いを越えて、もはや超人なのではと思ってしまいます。
でも、こうして天川村だけでなく全国の至る所に現在まで大切に受け継がれているということは、いかに飢えや疫病や災害に苦しんでいた当時の人々に安らぎを与えてくれたことは想像に難くありません。
今回こうして林先生のご指導のもと円空仏の観音様を彫らせていただきましたが、そこには私自身各々の心に安らぎをもたらせてくれる、そして、そこには円空さん自身の想い・志をはばからずとも伝承していけているのではないのかなと思わせていただく会でもあると、終わってから思いました。
時代は移ろい変われども、私たちの心に寄り添ってくれる円空さん、そして、数多の仏様、八百万の神様たちにこうして護りいただいていることへの『感謝』の気持ちが究極の『祈り』だったのかもしれません。
今回こうして深遠なるご縁をいただきこのような会ができたこと、そして、円空さんのすばらしさをお伝えいただきながら、静寂のなかで仏様と向き合わせていただいた林先生にこの場を借りてあらためて感謝御礼申し上げます。
また、ご参加いただいた皆々様にも重ね重ね御礼申し上げます。皆さまの想い、祈りが天に届きますように、切にお祈り申し上げます。
今回は『夏』をテーマの香りでありましたが、次回は『秋』に開催予定でおります。私どもとしてはこういう状況下だからこそ、必要な会だとも思っており開催を前向きに検討しておりますが、コロナの状況を垣間見ながら、日程が決まりしだいあらためて告知させていただきます。(なお、前回も告知・ご案内と共にご予約で埋まってしまいました。もし、既にご興味があられる方がいらっしゃいましたら、お問合せフォームよりご連絡くださいませ。日程が決まり次第、ご案内をメールにてお送りさせていただきます)