空海に学ぶ心の器に浮かぶ月 ~葉月の満月の夜に~

花鳥風月~美しい自然の移り変わり~
豊かな地球の恵みを敏感に感じ、絶妙な香りの配合を表現してきた先人たちの繊細な感性により培われてきた日本の香文化。それは、自然との共生を大切にし、様々なものを調和させ、新しいものを生み出す日本人の美意識そのもの。そんな日本人の美意識をはぐくむ「日本の美しい自然の移り変わり」を、本コラムでお届けします。

今年の梅雨は例年よりも長く、しとしと続く雨が本来は作物にとっては恵の雨だとわかってはいても、厚い雲に隠されてる太陽が恋しくなっていたかたも多いのではないでしょうか。路上に咲いているひまわりも、ようやく思いっきり満開に花開くことができるそんな喜びが伝わってきます。

そんな、梅雨があけてようやく本格的な夏の季節の到来ですが、夏のこの熱さが続くとそれはそれで水不足になりますし、また一方で、雨が続くと・・・。そう思うと、何事もバランスが大なのだなと思ってしまいます。

 

中庸(ちゅうよう)』

言葉の語源は儒学にありますが、意味としては「かたよることがなく、常に変わらないこと。つまり、過不足がなく調和がとれていること」ということを意味します。雨も太陽も中庸の流れでいくことで、自然の万物は生き生きと成長し、同じように人間も中庸の心でいることがおのずと自分自身の成長、発展へとつながるのかもしれません。

 

心の器の大きさは、各々それぞれなのでそこに優劣があるわけではなく、ただただその心の器を昨日より今日、今日より明日と少しずつと大きくしていくことを心掛けてみては、と優しく問い掛けていただきました。 それと同時に、このようなことも仰っていました。

いくら心の器が大きくなったとしても、少ししか水が溜まっていなければ満月も映し出されやしない。小さくても、水が満杯でいることで、丸い満月を映し込むことができます。

 

この言葉をなげかけられたとき、己の心の器の大きさよりも、きちんと水で満たされているのかと空を見上げながらふと自問自答をしてしまいました。

 

 

さて、今宵は葉月の満月の夜。自分自身の心の器の中の水の張り具合を確かめてみてはいかがでしょうか。

かく言う空海は「阿字観瞑想という密教の修行の一つにもなっている瞑想方法がありますが、瞑想を平たくいえば、『瞑想をつうじてありのまま自分の心を知ること、自分のこころをしっかりと見つめる作業』です。

心の器の水が抽象的すぎるのでわかりずらい方もいらっしゃると思いますが、感じ方、とらえ方はそれぞれでいいのかなと思います。いくら水の量があっても心の荒波が激しくなる“怒り”や“悲しみ”が激しければ、その気持ちを落ち着かせ、静かな湖畔をイメージするのもいいと思いますし、一方で、ふと『なんか幸せだな』とにんまりしてしまうようであればすでに心の水が満たされている証拠なのでそれを今度は器を大きくしてみるのをイメージしてみたり。

そういう意味では、『月輪観空海の教えの瞑想方法が今宵の満月の夜にはぴったりなのかもしれません。

  1. ご自宅にある器か桶に水を入れてください
  2. ボウルの水に映った満月を見て瞑想します。

 (ここでのポイントは、水面に映っている満月が自分の内側にはいってくることをイメージすること。理想は、月と一体感になれる感覚を会得することです。)

その際、香を焚くことで時間の目安にもなりますし、また同時にゆっくり呼吸をすることで、心の荒波になった穢れなども吐きだされ清められていく感覚になります。

 

心の水を満たす方法はそれぞれなので型にはまることなく行われることが一番で、何よりもご自身が“心地よい”“なんだか幸せ”などと少しでも夜寝る前にご自身の口角が上がっている、もしくは、口角を意識的に上げるそれだけでもいいのかもしれません。にんまり笑顔になっているご自身がまさに満月と一体になっているのでしょう。

笑みがあふれだす、そんな満月の夜をお過ごしください*

 

 

(2020年8月満月の夜に配信した月便りの内容を一部変更して転載しています)

 


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