古神道にまなぶ ~卯月の満月の夜に~

花鳥風月~美しい自然の移り変わり~
豊かな地球の恵みを敏感に感じ、絶妙な香りの配合を表現してきた先人たちの繊細な感性により培われてきた日本の香文化。それは、自然との共生を大切にし、様々なものを調和させ、新しいものを生み出す日本人の美意識そのもの。そんな日本人の美意識をはぐくむ「日本の美しい自然の移り変わり」を、本コラムでお届けします。

 

花吹雪から葉桜となり、晩春の愁い感じる季節になりましたが、二十四節気では「清明」が過ぎ、天地が春のやわらかな光が満ちていきます。

 

 

桜花散りぬる風のなごりには 水なき空に波ぞ立ちける  (紀貫之『古今集』)

桜の花びらはすでに落ちてしまっているが、その枝の先から空を見上げると、目に焼き付いている華麗な桜の姿が空に向かって放たれ、風にさそわれて乱舞して空にあふれ水もない空にまるで波のように押し寄せる、という幻影を華麗に表現されています。

しかし、今年の桜がみせてくれた風景は様々な感情も織り込まれ、またいつもとは違う桜の景色を情緒深く感じ、その華麗な景色も深く脳裏にやきついている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 

世界中が先の見えない不安に包まれているなか、こうして自然の中に入り木々の姿をみていると、強い風が吹き込んでも、嵐のような雨にさらされても、しっかりと根をつけ立ち、そしてまた今年もこうして花を咲かせ、新しい芽をだしてる木々の自然の姿に勇気づけられます。

 

そのとき、ふとこの言葉を思い出しました。

中今(なかいま)」

これは古神道の世界に伝わる言葉で「いまこの瞬間こそ真実であり、過去も未来も実体がない」という意味があります。 こうしておけばよかったと後悔する過去も、この先どうなるのかという不安に思う未来も、全ては幻。 過去や未来は「現在の中にすべて織り込まれた状態」、つまり、今”の連続であるということ。

 

 

自然の木々はきっと、倒される勢いの嵐がきようが、大雨が降ろうがそこには動じる心がなく”今”という瞬間をただただずっと佇んでいるのでしょう。

 

 

今宵は、卯月の満月夜。Juttoku.の香を焚きながら、無心に深い呼吸をしてみてください。 きっと香煙とともに、心の中に溜まった様々な感情も吐き出て、呼吸もゆるやかになりなり静寂がとりとめもなくつづく雑念を消してくれます。

こうして生をうけ生きている以上、辛いことや不安になることなど様々なことがありますが、いつまでも鬱々たる空気の中にうもれていては、せっかくの一度きりの人生の中で残された時間がもったいない。

 

『中今(なかいま)』という言葉が教えてくれているように、人生は“今”の連続。先が見えない不安は幻であり、ただただ『を生きる』。その意識で過ごしたときこそ、きっと来年の春は今年以上に笑顔で見える桜の景色があるのだとそう信じています。

 

すてきな満月の夜をお楽しみください*

 

 

 

(2020年4月8日満月の夜に配信した月便りの内容を一部変更して転載しています)

 

 


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