よき薫物たきて、一人臥したる~寒露の日に思ふ~

秋晴れの気持ちよ良い天気に恵まれ、あたりの空気も澄み切っております。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

寒露1
今日から、二十四節気では[寒露(かんろ)]に入りました。 ちょうど秋分から15日あとになり、[秋分]は秋のど真ん中だったのに対し、[寒露]からは晩秋となります。 
草の葉に宿る露が冷たくなり、いよいよ空気がひんやりとし始め、秋の深まりを感じられてるかと思います。

そして、今宵はなんと「満月」の日でもあり、そして・・・3年ぶりとなる『皆既月食』が見られる日。寒露にはいり、空も高くなり、空気には透明感が感じられる気持ちの良い季節となったいま、こうして宇宙の天体ショーもみられるとなるスペシャルな日! 

平日の夜なので、お仕事されている方も多くいらっしゃるかと思いますが、ぜひ今夜は早めに仕事を切り上げて・・・、夜空を見上げながら月夜を楽しみ、そして特別な時間をお過ごしください。

※参考までに・・・皆既月食は19:25からはじまり、20:25に終わるそうです。 皆既月食についての詳細は、[自然化学研究機構 国立天文台]のサイトをご覧ください。 (クリックすると、外部サイトが立ち上がります)

 

さて、先日のブログでもご紹介させていただきましたように、今月は「お香」について少しずつご紹介させていただきたいと思っております。

 

時代を越えて受け継がれてきた香のかたち

 

「お香」というと・・・多くの方が”線香”のようなスティックタイプのものを想起する方が多くいらっしゃるかと思います。 しかし、実際は総称してお香と言っているところもあり、日本の香の歴史を辿っていくと、実に様々な香の種類がございます。

例えば、香木をそのまま焚いて香りを聞いてみたり、粉末にした香料をはちみつや梅肉などを加えて練って固めた練香や、Juttoku.でもご案内している、香料を形に押し固めた印香など。その他にも、匂い袋や文香、掛け香など・・・・。

私たちがよく目にするスティックタイプの香というのは、長い歴史をたどると実は近世より(※1)になり、香木が漂着したといわれる595年から、雅な香文化が栄えた平安時代などでは、薫物として練香などを使っていました。

 

ただ、形態が異なれども、「香りを愛で、香りを楽しむ」という本質的な部分は、時代が変われども、その時ごとに人々の暮らしを彩ってきたのは間違いありません。

 

香の楽しみ方

そんな長い歴史を越えてもなお私たちの暮らしに彩りを与えてくれるお香。 どういう時にお香を使えばいいのですか?というご質問も時々いただくのですが、香の楽しみ方は人それぞれであります。

・リラックスして、心を落ち着かせたい時や
・仕事や勉強などの集中して取り組みたい時、
・おもてなしとして、お客様をいい香りでお迎えしたい時、
・気分を変えたい時

長い日本の歴史の中でも、使い方は様々です。 平安時代は、「香でしつらえる」というように部屋を香で焚き染め、お客様をお迎えしたり、戦国時代の武将などは、戦い前に心を落ち着かせ、精神を集中するために香(香木)を焚いたり・・・!

平安貴族女性

 

また、枕草子の下記の一節からは、清少納言を通じて当時の女性の心が垣間見えます。

 

 「心ときめきするもの
雀の子飼。ちご遊ばする所の前わたる。よき薫物たきて、一人臥したる。唐鏡(からかがみ)の少し暗き見たる。よき男の、車とどめて、案内し問はせたる。
頭洗ひ、化粧じて、香ばしうしみたる衣など着たる。殊に見る人なき所にても、心のうちは、なほいとをかし。待つ人などある夜、雨の音、風の吹きゆるがすも、ふと驚かる。」 (『枕草子』より)

 

[現代語訳]
心をどきどきとさせるもの
雀の子を飼うこと。赤ん坊を遊ばせている所の前を通る。高級な薫物を焚いて、一人で横になっている時。中国製の鏡の少し暗くなっているところを覗き込んだ時。高貴そうな男が、家の前に車を止めて、使いの者に何かを聞かせにやった時。
髪を洗って化粧をして、しっかりと良い香りが焚き染められてついた着物を着た時。その時には特別に見ている人がいない所でも、心がとても浮き立って楽しくなる。約束した男を待っている夜、雨の音や風が建物を揺らがすような音さえも、もう男が来たのだろうかと思って(驚き嬉しくて)胸がドキドキするものである。

 

きっと当時の女性も、宮中での仕事が終わった夜などは重い着物を脱ぎ、リラックスした状態で、香を焚き、心地よい良い香りのなかでゴロゴロしていたのかなと・・・・! それが、とても心が落ち着き、そして、心をときめかしてくれるひと時であったのでしょうね・・・・♪

 

このように、時代により状況下は違えども本質的な香の楽しみ方は、今でも同じだなぁといつも思います。

 

 

 

主知らぬ 香こそ匂へれ 
秋の野に 誰か脱ぎかけし  藤袴ぞも  
(『古今和歌集』  素性法師 巻四・二四一 秋歌上)

[誰が用いているのかわからにけれど、素晴らしい香りが香っていることだ。この秋の野に誰が脱ぎかけた藤袴なのか。]

次回は、日本の香の歴史も織り交ぜながら、お香の利用シーンについてもう少し詳しくご紹介させていただければと思います。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました!

 

 

今夜は、素敵な満月の夜をお過ごしください♪

 

 

 

 

カテゴリー: 1-日々是好日、日々是香日, Juttoku.便り パーマリンク

他にもこんな記事が読まれています。

    None Found